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 活性化リンパ球・CTL・樹状細胞療法で免疫強化

 
 

◆免疫賦活剤やワクチンなどを用いて、体の中の免疫力を高める免疫療法は、ある程度イメージできて分かりやすいのですが、注目されている「免疫細胞療法」とはどういうものか、理解するのがなかなか難しい。代表的な免疫細胞療法について説明してください。

 
 
クリーンルームでのリンパ球培養
 
     

がん細胞が私たちの体の中で発生しても、普段は元気なリンパ球などの免疫細胞が、がん細胞を退治するので、がんは消えてしまいます。しかし免疫力が弱っていたり、がん細胞が免疫をすりぬける能力を持っていると、がんは大きくなって私たちの体を破壊してしまいます。したがって、免疫細胞が関与する免疫療法では、がんを退治するのに細胞レベルの戦いが行われていることが分かります。

免疫細胞療法には、体の外で免疫細胞を培養し、免疫力を高めて体に戻す「活性化リンパ球療法」「CTL療法」「樹状細胞療法」などがあります。

●活性化リンパ球療法(CAT)

免疫をつかさどっているのは、リンパ球といわれる白血球の一種です。がんが成長すると免疫を抑える物質などを出すために、うまく体内で免疫反応が進まないことが多い。そこでリンパ球を体外へ取り出して、がんを攻撃する活性化リンパ球にして、クリーンルームで大量に増やして人体へ投与する方法です。一回につき20 cc 程度の採血で、2週間ほどで十分量の活性化リンパ球が得られます。

●CTL療法(CTL)

手術時などにがん組織の一部が手に入れば、その組織から抽出した物質で刺激したリンパ球を培養し投与します。このリンパ球は個々のがんに効きやすい可能性が高くなります。

普通の活性化リンパ球は、相手かまわずどんながんでもある程度やっつけるのですが、CTLは樹状細胞のルートを経由してがんの表面のペプチドを認識していて、そのがんしかやっつけに行きません。それだけを攻撃するわけですから、効率が高いのです。

ただし、効率のよいCTL療法にも落とし穴があります。がんというのは性格が変わっていくので、効かなくなることがあるのです。活性化リンパ球の方は攻撃ターゲットを特定できないけれども、どんながんでも適当に抑えます。基本的には両方を同時に使い、第一の敵をやっつけながら、形が変わった他の敵も抑えるようにします。

●樹状細胞療法(DC)

樹状細胞療法は、現在最も効果的といわれている免疫治療です。

樹状細胞は、がんの表面に出ている抗原物質を認識して、がんが入ってきたことを教えます。直接がんを攻撃する兵隊が活性化リンパ球なら、兵隊に「がんはこれだぞ、攻撃しろ」と指示を出す指揮官が樹状細胞です。この樹状細胞は大量に増やすのが難しいので、血液分離装置を使って血液から樹状細胞を取り出し、1週間ほど培養してから体内に投与します。投与された樹状細胞はがんを認識して、リンパ球に攻撃の指示を出すわけです。

樹状細胞は、がん組織と接触し、がん抗原を認識する必要があります。清潔ながん組織を体外に取り出して樹状細胞に混ぜてから体内に投与する方法(成熟樹状細胞)が一般的です。成熟とはがんの抗原を覚えているという意味で、そのためにはがん組織が前もって必要です。手術時にがん組織を凍結しておいて、あるいは再発したがん組織の一部分を局所麻酔で取って、樹状細胞に添加します。

また、がん抗原のペプチドを合成して樹状細胞に認識させる方法(ペプチド刺激樹状細胞)があります。この方法なら清潔ながん組織が手に入らない場合、打ち込むところのない場合でも、樹状細胞とくっつけることができます。ペプチドをくっつけた樹状細胞を、体の中のリンパ節に近いところに注入することで樹状細胞治療ができるようになりました。ただし、白血球の型が特別な場合に限られます。

手術の組織もない、白血球の型も合わない時、他の施設では樹状細胞ができませんが、当施設では可能です。樹状細胞を、エコーなどを使って生体のがん組織に打ち込む方法(樹状細胞腫瘍内局注)もあります。皮膚に打つのと違い精密な技術が必要ですが一番効果があります。例えば、頸のリンパ節や肝臓に再発していて、がん組織を取りにいけない、取りにいくのが危険な場合、がんの抗原が乗っていない未熟樹状細胞をエコーなどを使ってがんのところに打ち込みます。やってみると、この方法が一番よく効きます。この治療法は温熱療法と併用すると、さらに効果が増強し、1ヶ所で免疫が成功するとすべての領域のがんが完治する症例がでてきました。

当院なら可能な樹状細胞局所投与  
 
 
     

◆体外で培養された免疫細胞を投与する方法は?

一般に活性化リンパ球は点滴で投与します。点滴で投与しても、肺や肝臓へは免疫細胞はよく集まります。しかし、もっと効率よく免疫細胞をがんにたどりつかせるためには、肝臓やがんのある臓器への血管にチューブを入れて投与する方法(動注免疫療法)があります。また内視鏡を使って直接、がん細胞に打つ(免疫内視鏡療法)、超音波やCTを使って直接がんに注射する方法(局所免疫療法)も効率的です。樹状細胞の投与の時には特に投与方法が重要で皮膚に打つだけでは不十分です。超音波などを使ってリンパ節等に直接投与する精密な医療技術が必要です。

がん性胸水や腹水のある方には、胸水や腹水を抜いてその中のリンパ球を活性化して胸腔や腹腔に入れる方法が効果的です。

また、温熱療法を併用することにより、リンパ球をがんの部位に集めることも期待できます。

免疫療法は、がん細胞よりも免疫細胞が十分あれば効くわけです。敵と味方の関係で、敵が少なくて味方が多く、相手の周りを味方が取り囲める状況であれば、効率的に免疫反応を起こすことができます。したがって、投与する際にがんの局所に免疫細胞をしっかり行き渡らせることは重要な事です。

   

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