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  免疫療法と抗がん剤併用のタイミングに注意

 
 

◆免疫療法は抗がん剤と併用できるのですか。お互いの効果が失われてしまわないのですか。

免疫細胞をがんの局所に届かす投与方法は、一種の手技で重要なことですが、それよりも免疫療法と抗がん剤のタイミングの方がもっと大事です。免疫療法と抗がん剤を併用すると免疫が抑制されるとよく言われますね。確かに、免疫療法と同時に大量の抗がん剤を使うと、免疫細胞が死んでしまいます。しかし、時期をずらして投与すると非常に有効なのです。大事なことは「少量の抗がん剤をいかに上手に使うか」です。

初期のがんや実験レベルのがんは免疫だけで退治できますが、がんが大きく育ってしまうと、がんは免疫から身を守るために、バリア(防御壁)で身を隠したり、免疫を抑える物質を出すため、免疫だけではがん退治は難しくなります。この時、副作用が出ない程度に適量の抗がん剤をうまく投与すると、がん細胞のバリアや抑制物質が減って免疫が効きやすくなります。適量の抗がん剤を良いタイミングで使うことが、重要なポイントです。

抗がん剤により、中に入り込んでいたがんの抗原物質が表面に出てきますし、自分が同じ仲間(白血球の型)であることを示すHLA(ヒトの主要組織適合性抗原)も出てきて、がんを認識しやすくします。また、免疫を抑制する物質を出す細胞だけを、少量の抗がん剤で上手に抑えられます。抗がん剤はうまく使うと、がんを抑えるだけではなく、免疫を上げる物質でもあるのです。

併用のタイミングは、例えば2〜3週間抗がん剤を使用して1週間休む場合、休む期間に免疫細胞を入れていきます。抗がん剤の種類によっても、影響が長引くものと長引かないものがあります。今よく使われているTS-1やタキソールという薬は、免疫抑制が比較的少なく、抗がん剤を使っていても2〜3日ぐらいたてば免疫療法を行っても大丈夫。その患者さんに合わせたスケジュールを立てることが、最も大事です。簡単に言うと、抗がん剤で弱らせて免疫が効きやすくなったがんにとどめを刺しに行くということです。抗癌剤と免疫治療の順序と投与等が重要です。抗癌剤の事をよく知っていないと+にならず−になることもあります。

◆ハイパーサーミア(温熱治療)が放射線や抗がん剤との併用で、それぞれの効果を高めることは知られています。熱に弱いがんを加温して撃退する以外に、免疫療法との併用ではどのようなメリットがありますか。

ハイパーサーミアは、がんの集学的治療の中で、免疫療法とともに重要な働きをします。当センターでは温熱を加えることによって、がんの縮小だけでなく、完全にがんが消失する例が出てきました。温熱療法で前処置をして、そこに樹状細胞免疫療法を行うことによって、治療した部位だけでなく、すべての部位のがんがすべて完治しがんが消失する症例が出てきています。

温熱ががんを抑える理由は、「がんは熱に弱い」からですが、それ以外にも抗がん剤の効果や免疫の効果を上げることが分かっています。

温熱は抗がん剤と併用しますと、がんの血管の特殊性により抗がん剤ががん組織に集まり、正常組織へは行きにくくなります。したがって同じ抗がん剤の量を使っても、効果が上がって副作用が少なくなります。本来がんは免疫で抑制させていますが、がんが大きくなると免疫を抑制してがんが成長を続けます。温熱療法はこの抑制された免疫を元に戻し、さらに増加させる事により、免疫でがんは排除されるようになります。

次に免疫とのかかわりです。

(1) HLAという物質ががん表面にたくさん出て、がんがここにあるぞというのが分かりやすくなり、免疫細胞が攻撃しやすくなる。
(2) リンパ球(NK細胞やT細胞など)が増え、しかもがんを殺す力が強くなる。
(3) がんの転移を引き起こす物質が少なくなる。

このように、温熱療法が免疫力の増強をもたらし、がんの抑制に働くことが分かってきました。それならばなおさら免疫療法との併用が、がん治療に有効であることは言うまでもありません。

 
 
CTによる仙骨腫瘍の変化
 
     

●71歳女性。原発不明がん(転移性骨盤腫瘍)。2005年4月、強い腰痛と歩行障害のため近医を受診。PET、CTにて仙骨左側に径38mm、仙骨右側に径27mmの腫瘤を認め、針生検で腺がんと診断。

●消化管検査、胸部CT、婦人科的検査でも原発は不明。6月より放射線治療および7月より抗がん剤治療(TJ)が施行されたが、腫瘤はさらに増大、同年9月立ったまま座ることもできない状態となり、主治医に温熱療法をしてほしいと訴えるも同意されず、当センターを受診した。

●抗がん剤使用は希望されなかった。温熱療法(サーモトロン-RF8)を9月末より2006年5月末まで週1回、計36回。活性化リンパ球を2週に1回、計16回施行した。

●治療開始2カ月目の11月末には容易に座ることも可能となり、四国(お遍路)に宿泊旅行、階段も上がれるようになった。CEAも9月75.3 ng/mlが12月13.6 ng/mlと低下した。CT上でも左骨盤転移の改善が認められた。左は治療前(9月22日)、右は治療後(12月22日)。
(第27回癌免疫外科研究会において発表。『癌と化学療法』第33巻12号(2006年11月)に掲載されました。)

   

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