温熱が免疫力を高め、がんを抑える。 | |||||||||||||
| |||||||||||||
人が病気になった時の発熱には、体の免疫力を高める作用があります。患部を局所的に温めるハイパーサーミアも、免疫力を高める働きをします。がんの組織に高周波を加え、39〜41℃になると、免疫(NK細胞、インターフェロン-γ、マクロファージなど)が活性化し、がん細胞を死滅に向かわせます。 ハイパーサーミアは腫瘍局所を42℃以上に加温することによって、がんを撃退すること、また放射線や化学療法の効果を高めることで発達してきました。しかし、42℃以上にならなくても、免疫力が増強され、放射線や抗がん剤の増感効果が得られることが分かり、さらに新しい分野での利用も研究されています。 通常の体温から数度高い温度環境にさらされると、生体はこれに抵抗する働きのあるたんぱく質を作ることが知られています。この「熱ショックたんぱく質(ヒート・ショック・プロテイン)」は、体に入った異物を排除する免疫と同じような生体防御の働きをします。熱もストレスの一つで、「ストレスたんぱく質」とも呼ばれています。マイルド・ハイパーサーミアといわれる40℃前後の温熱は、体に適度のストレスを与え、熱ショックたんぱく質を増やし、免疫力を高めます。
照沼裕・日本バイオセラピー研究所所長は、局所マイルド・ハイパーサーミアによるNK細胞やTリンパ球などの変化から、免疫系の活性化を調べました。マイルド・ハイパーサーミアを行う直前と比較して、加温1日後と7日後のリンパ球中でのNK細胞百分率・細胞傷害性NK細胞百分率・NK活性、加温1日後の細胞傷害性NK細胞数が有意に増加しました。 また、加温1日後と7日後のリンパ球中でのTリンパ球百分率・CD4陽性Tリンパ球百分率、加温7日後のCD4陽性Tリンパ球が有意に減少しました。興味深いことに、免疫抑制に関与する調節性Tリンパ球百分率・調節性Tリンパ球百分率・調節性Tリンパ球数が有意に減少しました。 これらの結果は、局所マイルド・ハイパーサーミアにより、NK細胞を中心とした自然免疫が活性化される一方、調節性T細胞による免疫抑制が解除され、悪性腫瘍に対する免疫活性が増強される可能性を示すものです。
| |||||||||||||
Natural killer(NK) cell activity versus K562 targt cells in mononuclear cells isolated from peripheral blood before (open circles), and 1 day (closed squares) and 7 days (closed triangle) after regional mild hyperthermia. The results are the means and SEM calculated from data obtained from 4 volunteers. *Significantly different from the mean value observed before mild hyperthermia treatment, p<0.05. | |||||||||||||