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  ハイパーサーミア(がん温熱治療)  
   
 
大阪大学大学院教授 中村 仁信氏  

特別講演
がんの低侵襲治療―IVR、放射線治療、温熱療法

大阪大学大学院教授
中村 仁信

 

がんの集学的治療をするためには、侵襲性の低い治療を行わなければならない。それは、IVRや放射線治療、温熱療法、免疫療法といった治療法をうまく組み合わせることだ。

IVRは、カテーテルを使った動脈化学塞栓術などがある。肝臓には、動脈と門脈の両方から血液が流れており、肝細胞がんは100%近く、動脈から栄養を取っている。動脈をブロックするとがん細胞は大きなダメージを受ける。油性の造影剤・リピオドールと抗がん剤を混ぜ合わせたものを、カテーテルでがん細胞の中に注入し、その後にゼラチンスポンジを細切れにした塞栓物質を注入し、血液の流れを止めてしまう。日本肝癌研究会の集計では、切除不能がんに対して行われたこの治療の成績は、3年生存率が5割近くと、非常に良い成績を出せるようになっている。

放射線治療は、周囲の臓器・組織も照射され、副作用も大きかったが、物理工学的進歩で、正常組織の線量を極力減少させ、病巣にピンポイントで照射できる定位放射線療法が出来るようになり、治癒するがんが増えた。早期肺がんでは、5年生存率は74%となり、手術と大差がなくなった。温熱療法は、肝臓がんの場合、化学塞栓療法と併用すれば、非常に効果があがるというデータがあり、DSM(ジャガイモのでんぷん)を塞栓物質として使った、温熱化学塞栓療法を行っている。でんぷんだから血中アミラーゼで分解されるので、1時間程度の血流遮断が簡単にでき、抗がん剤の繰り返し投与も可能。そのため、抗がん剤の局所濃度も高く維持され、また、DSMで血流を止めると、温熱療法によるがん組織の温度も上がることがわかっている。

肝臓がんに対する治療は、こうした治療法をうまく組み合わせて使うことだ。動脈化学血栓療法は、病巣が限定されている場合には有効だが、広範囲のがんには十分に対応できない。また血流の乏しいがんには効果が低い。その場合には、DSM温熱化学血栓療法を行うことで、広範囲のがんや、血流の乏しいがんも治療できる。骨などに転移した場合には、定位放射線治療で対応できる。

   

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