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  ハイパーサーミア(がん温熱治療)  
   
 
医療法人共愛会戸畑共立病院がん治療センター長 今田  肇氏  

特別講演
温熱療法を中心としたがんの集学的治療

医療法人共愛会戸畑共立病院がん治療センター長
今田  肇

 

戸畑共立病院では、放射線治療と化学療法、温熱療法を組み合わせて、がんの集学的治療を行っている。温熱療法は、放射線治療、化学療法の効果を引き立ててくれる。

温熱療法は、表面から飛び出しているような表在性の腫瘍については、非常に良く効く。体内にある深部腫瘍は温めることは大変だが、放射線治療と化学療法を併用すると、単独で行うよりずっと大きな効果が上がる。治る可能性の低いがんや再発にも適応でき、脳以外のあらゆるがんが治療の対象となる。

放射線との併用では、高い出力で加温すると患部の温度が上がり、患者さんが長生きされるというデータもある。高周波をフルパワーでかけると、少ない放射線量でも治るケースも多い。3期Bの肺腺がんの方でフルパワーの温熱療法と少ない放射線を併用したところ、現在まで9年間、生存されている症例もある。

私たちのデータでは、肺がんで温熱療法と化学療法を併用した治療の奏効率は、治癒と腫瘍が半分以上の小さくなった症例を含めると、全体で66%になっている。薬剤単独では、30%ぐらいが良い報告だが、その倍の効果がある。しかも抗がん剤が効かなかった患者でも10人に1人が治癒し、半数の方は腫瘍が半分以上縮小している。

温熱療法には、過去に薬物耐性になった症例でも、薬剤の感受性を再度取り戻せる可能性ももたらすなどのメリットもある。しかし、耐性になって温熱療法を行うより、最初から化学療法に温熱療法を併用するのが理想的だ。

また、温熱化学療法は薬剤の使用量が少ないため、おう吐などの副作用も少なく、患者のQOLを保った外来治療が可能で、長期にわたっての治療も可能になる。がん性疼痛などへの効果や全身の免疫力上昇などの効果も望めるため、がんの休眠療法としての潜在的能力もきわめて高いと考えている。

放射線治療、化学療法、手術というがん治療の3本柱があるが、温熱療法を実施している病院は非常に限られている。温熱療法をがん治療に上手に取り込むことで、患者が得る利益は大きく、集学的治療に取り組む病院が増えることを期待したい。

   

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