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特別講演 大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学教授 森 正樹氏  
Ⅰ部 特別講演
「癌診療の進歩」

大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学教授
森 正樹

 

現在、3人に1人ががんで亡くなり、2人に1人ががんにかかっている。がんになる割合は5割だから、がんになっても当たり前と考えて、がんを早く見つけなければならない。早期に治療すれば出血も痛みも少なく、確実に治る可能性が高い。がんは全身にできるが、早い段階では自覚症状がない。症状がなくても誕生日には検診を受けるなど、自分なりのルールを作ってほしい。

がんは遺伝子が傷つけられるなどの原因で、細胞分裂が失敗すると発生すると考えられる。がんを発生させる要因のほとんどは、毎日の生活習慣の中に存在する。特に、たばこと食事の影響が大きい。たばこの煙に含まれるベンゾピレンは胎児にまで影響を与え、吸っている人だけでなく、周りにいる人にも危険が及ぶ。がんの予防のためには、生活習慣を改善することが重要であり、それは難しいことではなく、誰でも普段の生活で気をつければできることだ。国立がんセンターが提唱している「がんを防ぐための12カ条」を実行してほしい。

がんの外科治療では、進行したがんでなければ、おなかに1センチから5ミリの穴を開けて腹腔鏡を入れ、モニターを見ながら手術する方法が普及してきている。この腹腔鏡下手術は、開腹手術に比べて痛みがなく、傷が小さくてすむ。通常は4〜5カ所に管を入れて手術するが、1カ所だけ穴を開けて行う方法もある。

さらに最近では、おなかに傷をつけないで手術する経管腔的内視鏡手術(NOTES=Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)も行われるようになった。女性であれば膣から管を入れて、胃や大腸などの手術をする。口から管を入れ、食道を通して胃に小さな穴を開けて、そこから小腸や大腸、子宮などの手術をする方法もある。管が入ったところは縫ってしまうので、おなかに傷がつかない。まだ試験段階なので過剰な期待はしないでほしいが、10年後には一般的な手術になっているかもしれない。

抗がん剤治療も進歩している。従来の抗がん剤は、がん細胞が正常細胞にくらべて増えるスピードが速いことを利用したものだった。だが、血液や消化管の細胞は正常でも増えるスピードが速いため、抗がん剤の影響を受けやすい(副作用が出やすい)。そこで、がん細胞には正常細胞と異なる目印(分子)がある点に注目し、がん細胞だけにある目印を攻撃する薬が開発されている。分子標的薬と呼ばれるもので、がん細胞だけが攻撃されるため、副作用が少ないと予想されている。しかし、使われ始めて日が浅いため、本当に副作用が少ないか、見ていく必要がある。

放射線治療では、従来のエックス線やガンマ線と異なる重粒子線を使った治療が始まっている。今までのエックス線やガンマ線は、体の浅い部分に効くが、体の深い部分には効果が少なく、低酸素下のがん細胞にも効果が少ない。新しい放射線治療は、体の深い部分に効果があり、低酸素下のがん細胞にも効果がある。日本では数施設で行われているが、大がかりな装置を必要とするので、普及するのはまだ先になるだろう。

   

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