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がん治療最前線
  ハイパーサーミア(がん温熱治療)  
   
 
パネルディスカッション・質疑応答 会場からの質問にも答えた。  
■パネルディスカッション・質疑応答



◇座長

武田力氏
◇パネリスト
森正樹氏、森崎隆氏、谷川啓司氏

 

◆抗がん剤治療と免疫療法の併用について。

  当日、大阪ガン免疫化学療法センターによる医療相談も行われた。
当日、大阪ガン免疫化学療法センターによる医療相談も行われた。
   

森崎 抗がん剤は免疫機能をつかさどる細胞を減らし、力も弱める。だから、抗がん剤と免疫療法は併用できないのかというと、そうではなくて、効果を下げないようにすればよい。抗がん剤の強い注射を打った当日に樹状細胞ワクチンやリンパ球療法をすれば、せっかくの免疫の反応を抗がん剤が邪魔することになる。したがって、タイミングが非常に大事だ。どういうタイミングにするかは、がんの種類や進行度、抗がん剤の種類によって異なる。例えば、ジェムザールという免疫機能をあまり下げない抗がん剤の場合は、近いタイミング、抗がん剤治療の翌日か2日目ぐらいでも併用効果がみられる。決して、抗がん剤と免疫療法を併用したら意味がない、併用したらいけないというわけではない。

谷川 先週、アメリカのワシントンで開かれた学会に参加してきた。基本的に免疫療法は、抗がん剤との併用が一般的になっている。実際には、抗がん剤の良いところと免疫療法の良いところをミックスした形で、患者さんにとってプラスになるような治療が考えられるべきだし、現実にそうなっている。

◆家庭でもできる温熱治療は、効果があるのか。

武田 体の深部まで温めることができるのは、また健康保険の適用になっているのは、今のところサーモトロン-RF8だけだ。がん治療のための温熱療法は、いずれにしても専用の機械が必要で、自宅でできるようなものではない。

谷川 温熱療法は、温度によって効果や目的が違う。大きく分けると、42〜43.5℃以上の高い温度は、温熱療法そのものでがん細胞を死滅させることを目的としている。39〜41℃の場合は、免疫系を活性化し、免疫能を賦活させることが主な目的になる。さらに低い37〜38℃以下では、リラクゼーションの領域になる。ただ、体を温めることで免疫は上がると一般に言われており、そのレベルだと思えば、それが決して悪いわけではない。

◆最先端医療を行っている大病院で、免疫療法を行わないのはなぜか。

武田 実は全く施行していないというわけではない。昔、高度先進医療といわれていた時代には、東京女子医大や山口大学などで一部のがんに対して実施していた。最近でも研究を主目的に行われているが、希望する方全員を治療できるわけではなく、限られた方しか対象者にならない。

森崎 大学病院や大病院が治療として免疫療法を実行するには、あまりに忙しすぎる。特に細胞を使った治療は一人ひとり違うので、非常に時間と手間がかかる。ただ、細胞を使わないペプチドワクチンによる免疫療法などは注射だけですむ。多くの大学病院で、ペプチドワクチン療法は抗がん剤治療と併用で臨床試験を始めつつある。

 標準治療の三つの治療法が、まだ完全ではない。大学病院の使命として、標準治療の完成度を高めなければいけない点が多々ある。免疫治療は、患者さんから細胞を取り出し、それをクリーンルームで増やすのに時間がかかる。国がお金と人を出してくれれば、大学病院でもぜひ実施しないといけないが、現実には医療費の制約があり、医療保険も全く余裕がない。

◆病院の選び方を知りたい。

武田 がんは一つの治療法で、なかなか制御できない。標準的な治療法と免疫・温熱療法のどちらの治療法にも知見があるかどうかが大事だ。医師の履歴などをチェックする必要がある。

谷川 最低限、がん治療が分かっている医師のところへ行かないと、偏見を持った医療行為を受けることになる可能性がある。

森崎 がんの標準的治療であれば、都道府県にがんの拠点病院がある。そこでどういう医師が自分の主治医になってくれるかどうかが重要だ。治療には精神的な要素もかかわる。人間として医師と相対さないといけない。

 日ごろから話のできる、近くのかかりつけ医を見つけておいたほうがよい。まず、その方に診ていただいて、何かあったときには大病院を紹介してもらおう。がんと言われた場合、別の病院の先生にも診てもらって意見を聞くセカンドオピニオンを、もっと積極的に利用してほしい。日本人は非常に控えめだが、「セカンドオピニオンをお願いします」と、堂々と言ってください。

   

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