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特別講演「がん治療逆転の戦略」
医療法人財団恵仁会理事長 |
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私たちの脳細胞は、酸素を運ぶ血流が途絶えれば3分で死んでしまう。生体にとって一番の生理的ストレスは低酸素であり、低酸素により傷害された細胞が他の細胞に悪影響を及ぼさないことが、生体防御の大原則。ところが、がんはそれを無視して増殖する。 がん組織が増大していく過程で、血流の供給ができない低酸素エリアができる。低酸素環境下では、多くのがん治療はその有効性を失う。抗がん剤を投与してもがん細胞に届かず、放射線も免疫療法も効果が薄い。がんの増殖を止めるのに、ハイパーサーミアと高気圧酸素療法が有効だ。 高気圧酸素療法は、一酸化炭素中毒やガス壊疽(えそ)、脳梗塞、腸閉塞などの治療に使う。酸素を強制的に血中に溶かし込む治療法で、抗がん剤の効果も高まる。当院の高気圧酸素療法では、100%の酸素2気圧の中に90分入って酸素を吸入する。 今、がんの消滅を図るのではなく、がんの増殖過程を停止させる治療が必要だ。進行がんや転移に対して、ハイパーサーミア、高気圧酸素療法、低用量化学療法、放射線を正確に集中させる定位放射線治療の併用が、生存期間を延ばす最高水準のがん治療法になる。 |
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