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  併用治療で相乗的効果 免疫増強にも注目

 
 

◆民間病院としては、いち早くハイパーサーミア(温熱療法)をがん治療の中に取り入れられたようですが、その有効性についてお聞かせください。

西出病院では1998年12月から、ハイパーサーミア(温熱療法)の専用装置「サーモトロン−RF8」(山本ビニター社製)を導入し、これまでに550人を超える患者さんの治療に当たってきました。

当院に来られた患者さんは、それまで数種類の抗がん剤や放射線治療を受けてきたにもかかわらず、その治療効果が現れず、反対に副作用で苦しまれている方がほとんどです。ハイパーサーミアが苦しい抗がん剤治療などの代わりになるのではないか、との期待を持って来られるわけです。しかし、現実問題としてはハイパーサーミアが、抗がん剤や放射線という治療方法に取って代われるものではありません。実際には、ハイパーサーミアは主に抗がん剤と同時併用する形で行っています。

そもそも、がん細胞というのは熱に弱いという特性を持っているので、ハイパーサーミアには直接的な抗がん作用があると言えます。しかし、最大のメリットはこの副作用のほとんどないハイパーサーミアと、抗がん剤治療、放射線治療などと併用することにより、それぞれの治療効果が相乗的に向上し、単独での治療に比べてもより大きな効果が期待できるという点にあります。例えば、抗がん剤との併用治療で腫瘍が消え、6年経った現在でも再発のないという完治症例もあります。

患者さんの体力や体質などによって違いはありますが、ハイパーサーミアを併用することで、抗がん剤の投与量は通常の半分から7割程度まで抑えられます。ハイパーサーミア自体には副作用はほとんどありませんので、苦しい抗がん剤の投与量を減らすことで、患者さんは比較的安定したQOL(生活の質)を維持したまま、治療を続けることができます。
これも大きな特徴であると思っています。

西出病院の西出巖会長(中央)と治療スタッフ
 
 
西出病院の湯川顧問(前列左)、西出巖会長(同左から2人目)と治療スタッフ
 

◆今では、ハイパーサーミアによる免疫力向上は広く知られているところですが、早くから免疫機能の亢進や抗ウイルス作用に気づかれ、注目されていたようですね。

私たちの体の中では、毎日200から300のがん細胞が生まれます。しかし、がん細胞が出来ても、必ずがんになるとは限りません。それは、免疫などの防御システムが働いているからです。このシステムの中で、がん細胞をやっつける働きを持っているのは、NK(ナチュラルキラー)細胞とキラーT細胞です。これらの免疫機能が正常であれば、人はがんになりにくいのです。反対に、免疫力の弱いエイズ患者や、臓器の移植によって免疫を抑える薬を飲んでいる患者さんは、がんになりやすくなります。

ハイパーサーミアに免疫機能を高める力や抗ウイルス作用があることに気づいたのは、私がまだ大学の教授時代で、肝臓がん患者のハイパーサーミアを西出病院に依頼したのが端緒でした。患者さんは全員C型肝炎ウイルスが陽性でしたが、それがハイパーサーミア後に全員、ウイルスが減少していることが分ったのです。この結果を受け、肝臓を加温すると何かが起こるのではないかと考え、免疫の専門家を加えて実験を行いました。ボランティアの正常人に協力をしてもらい、サーモトロンで加温したところ、抹消血中の樹状細胞が著しく増加するのが判明しました。樹状細胞はNK細胞などに攻撃を命令する指揮官で、その増加は、免疫機能が高まったと考えられます。

さらに、その後の臨床データからもそのことが裏付けられました。ハイパーサーミアによってQOLが改善した患者さんは、温熱治療中に免疫力を高めるNK細胞の活性化が認められました。私たちが病気になった時に出る熱には、体の免疫力を高める働きがあります。同じように、抗がん剤治療や放射線治療で免疫が低下しているがん患者さんの、患部を局所的に41〜43度に温めると免疫力がアップするのです。

細胞活性化グラフ
 

このように、ハイパーサーミアは、他の治療法との相乗作用やQOLの改善だけでなく、全身の免疫力増強という効果もあります。実際に治療を受けられた患者さんが元気になる様子を見ていると、すごい治療法だと思います。抗がん剤で免疫力が低下している時に、もうダメと思っている免疫細胞に、「頑張れ」という温熱の刺激を与えるこの療法は、がん治療の大きな武器になっていると思います。この武器を最大限利用するため、近い将来、患者さんの血液から培養した強い免疫細胞を作り、ハイパーサーミアと抗がん剤治療、免疫細胞療法の3者併用治療にも取り組んで行きたいと考えています。

   

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湯川 進さん
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