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特別講演 「進行消化器がんの集学的治療−とくに温熱療法と免疫療法の実際について」 京都府立医科大学准教授 | |||
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私は大学病院と関連病院で、週に75〜85人の患者さんに、サーモトロン-RF8を用いた局所温熱療法の治療を行っている。基本的に温熱療法と抗がん剤の併用で、それぞれの抗腫瘍作用に加えて併用による相乗効果が期待できる。具体的には、抗がん剤の殺細胞効果を増強する、抗がん剤の抵抗性獲得機構を抑制する、腫瘍先進部への抗がん剤の到達性を高めるなどの効果だ。抵抗性とは、抗がん剤を長く続けていると効きにくくなる耐性のことで、耐性のメカニズムを温熱処理でブロックできるということが分かってきた。 例えば、すい臓がんは予後が非常に悪いがんといわれていたが、最近は少しずつ良くなってきている。それはジェムザールという抗がん剤が出てきたからだが、ハイパーサーミアを併用すると、ジェムザール単独よりもさらに生存率が高くなるという臨床研究の治療成績が得られた。 化学療法と免疫療法の違いを分かりやすく言うと、抗がん剤は「割合」でがん細胞をやっつけるが、免疫療法は「絶対数」でがん細胞をやっつけるということだ。例えば、99.9%までがん細胞をやっつける非常によく効く抗がん剤を想定した場合、10億個のがん細胞は100万個になる。100万個のがん細胞は1000個になる。が、決してゼロにならない。一方、免疫療法は対応できる数がそれほど多くはない。例えば、100万個のがん細胞を確実にやっつけることができるとすると、10億個のがん細胞のうちの100万個をやっつけてもそんなに変わらないことは当然だ。しかし、手術や抗がん剤治療とハイパーサーミアで100万個まで減らしておくと、免疫療法でゼロにすることは可能だ。つまり根治の可能性がある。 免疫療法は大きく分けると、患者さん本人の免疫システムを活性化する「がんワクチン」と、体外から免疫物質を注射する方法の2種類がある。がんワクチン療法には、ペプチドワクチン療法と自家ワクチン療法、樹状細胞ワクチン療法の3つがある。自家ワクチン療法は、患者さん自身の手術で得たがん組織を加工してワクチンを作り、それを皮内投与する方法。私たちの臨床試験では、肝細胞がんの再発予防効果を確認できた。 固形がんに対しては「手術、抗がん剤、放射線療法で可能な限り、がん細胞を減らしておいてから、仕上げは免疫療法で!」というのが治療戦略になる。その際、温熱療法が免疫療法の効果を増強する。 | ||||