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がん治療最前線
  ハイパーサーミア(がん温熱治療)  
   
 
京都府立医科大学名誉教授 医療法人恒昭会藍野病院名誉院長 近藤 元治氏  

特別講演
がん難民にならないために

京都府立医科大学名誉教授
医療法人恒昭会藍野病院名誉院長

近藤 元治

 

増え続けるがんは日本人の死因の1位で、もはや特別な病気ではない。かつては「告知」の是非が問題となっていたが、今は「事実を知る」ことが大切だ。治療も格段の進歩を遂げている。ただ、あまりにも情報が多すぎて、どの治療を受けたらよいのかわからなくなっているのではないか。普通、患者はまず標準治療を受けるが、再発してしまうこともある。医師はあくまでも縮小を目指すが、やがてお手上げになると、治療への意欲が薄れ、最終的にはホスピスに送るしかなくなる。しかし、がんとの戦いに敗れた患者は、別の治療を求めて、難民のようにさまようことになる。

がん組織は血流が不十分で加温しやすく、ハイパーサーミアで加温を繰り返すことで、腫瘍の縮小、延命、QOL(生活の質)の向上が期待できる。さらに、がん組織の温度が上がると、抗がん剤の取り込みが上昇。免疫力も倍増し、抗がん剤の副作用も軽減できる。また、ハイパーサーミア自体には副作用はなく、健康保険が適用された患者に優しい治療法だ。決して万能な治療ではないが、まずがんが大きくなるのを抑えることを目標にしている。現在のがん治療では、がんの縮小がなければ無効とされるが、「不変」でがんと共存できるようにするのも大きな効果だと思っている。

ハイパーサーミアの普及を阻んでいる要因がある。新しい治療法に関心を持つ医師は増えているが、腫瘍の縮小、延命につながらなければ、すぐあきらめてしまう。それどころか、そうした治療法について、患者側から質問があっても、勉強不足を棚に上げて、否定的な発言をすることが多い。また、ハイパーサーミアは保険適用されるが、一連の治療につき1回のみの請求ということから、高額機器の償却が出来ず、医療側のメリットが少ない。そのため、機器のある施設が増えず、医師が温熱療法を経験するチャンスが少なく、その知識を持った医師が増えないという現状がある。温熱療法に関心を持たれたら、十分な説明をしてもらえる施設に行き、まず、チャレンジしていただきたい。

   

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