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がん治療最前線
  ハイパーサーミア(がん温熱治療)  
   
 
ビオセラクリニック院長 東京女子医科大学非常勤講師 谷川 啓司氏  
II 部免疫細胞療法とハイパーサーミア
「癌治療にとって免疫を上げることの意味と対策」

ビオセラクリニック院長
東京女子医科大学非常勤講師

谷川 啓司

 

免疫とは、体の正常な状態を維持しようとする本能、異常が生じたときに元に戻そうとする働きである。その仕組みを説明するのに、侵入者や無法者から街の安全や平和を守る例を挙げると分かりやすい。監視役のパトロール部隊による察知、ガードマン部隊による取り押さえ、掃除部隊による片づけ。そこから情報を入手し効率的作戦を立てる先生、ターゲットを攻撃する特殊部隊などが存在する。

同じように私たちの体も、いろんな役割を持った免疫細胞が巧みな連携プレーで守ってくれている。街の中をパトロールするように、体の中を循環しながら異常がないかをチェックする免疫の働きをつかさどっているのは、血液の中の白血球系細胞だ。この細胞たちは24時間、365日、休まず働いている。

では、なぜ病気になるのか。体の中に異常が起きても、それを病気として自覚しているかどうかは別の話だ。異常が発生しても、すぐさま免疫が働いて抑えてしまったら、私たちは症状に気がつかず、自分は正常だと思っている。免疫が追いつくのに時間がかかる場合は、追いつくまで体調不良が続く。例えば、ウイルスが体に侵入して風邪を引いたとき、免疫反応が起こっている段階は具合が悪く、追いついた段階で体は楽になる。

免疫が追いつけるかどうかは、時と場合による。細菌やウイルス、がん細胞など異常なものが増えていくスピードと容積、そして異常なものを抑えて排除する免疫の効率と能力によって決まる。相手が強すぎると追いつけず、生命を維持できない状況になる。

では、私たちが治療をするということはどういう意味なのか。それは体の中で増殖する異物に対して、どういう対策で量を減らしていくかということになる。まず、増えた塊を一気に排除する方法として、大きな塊を取り除く手術、塊を焼いてしまう放射線による治療がある。次に、増えるスピードを遅くする方法として、抗がん剤などの薬を使う治療がある。スピードダウンすれば、免疫が追いつけるかもしれない。もし追いつけたら勝てる。

免疫を担っているのは生きている細胞であり、その機能は「士気」にも影響される。精神的なことで免疫力は変化するから、心理療法的な対応も必要になる。また、栄養学的な面でも免疫力は変化するから、食事やサプリメントも無視できない。さらに、相手をどう認識して攻撃するかという「戦術・戦略」も重要だ。免疫療法と併用する温熱療法には、抗原性を高める働きもある。ワクチン療法は、正常細胞にはなくてがん細胞にある特徴を免疫細胞に伝える。活性化リンパ球療法は、効率よく戦闘モードを整える。

がんは大敵であり、標準治療だけではなかなか勝てない。できるだけ有利に戦うためには、オプションとして免疫細胞療法と温熱療法を追加することが患者さんにとってプラスになる。

   

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II部 免疫細胞療法とハイパーサーミア 「未来がん治療〜『免疫』を考えた総合的がん治療の意味〜」
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