毎日健康サロン がん治療ウェブフォーラム ホーム がん治療のフロントランナー 注目のドクターたち ハイパーサーミア がん温熱治療 がん治療最前線
がん治療最前線
  ハイパーサーミア(がん温熱治療)  
   
 
大阪ガン免疫化学療法センター院長 元大阪大学医学部外科講師 京都府立医科大学客員講師 武田 力氏  
II 部免疫細胞療法とハイパーサーミア
「がん治療〜免疫と温熱の効果〜」

大阪ガン免疫化学療法センター院長
元大阪大学医学部外科講師 京都府立医科大学客員講師

武田 力

 

がんが発生すると、がん細胞の表面に出ている抗原物質を樹状細胞が取り込んで認識し、変なものが入ってきたことをヘルパーT細胞に教える。これを抗原提示という。そこでいろんな物質(サイトカイン)が出てきて、免疫細胞を活性化し、最終兵器であるリンパ球が活性化されて増える。

リンパ球を体外へ取り出し、クリーンルームでがんを攻撃する活性化リンパ球にして大量に増やし、それを人体へ投与する方法が「活性化リンパ球療法」だ。「樹状細胞療法」は、「がんはこれだぞ、攻撃しろ」と指示を出す樹状細胞を投与する治療法で、樹状細胞は大量に増えないので、血液分離装置を使って血液から樹状細胞を取り出し、培養してから体内に投与する方法だ。がん細胞のある組織やリンパ節に直接樹状細胞を投与するのが、最も効果がある。標準治療に活性化リンパ球を追加すること(免疫療法)によって生存率が上昇することは、国立がんセンターや千葉県がんセンターのデータでも示されているが、知らない医師が少なくない。

温熱療法に関しては、高周波で体の内部から加温できる装置としてサーモトロン-RF8がある。人間の体は外から熱を加えても体温は変わらず、深部までは温められない。サーモトロン-RF8は熱に弱い腫瘍を攻撃する装置として開発されたが、温熱療法単独では期待された効果が得られなかった。しかし、放射線や抗がん剤、免疫療法と併用すると、大きな効果が得られることが分かってきた。

温熱療法が免疫療法の効果を上げるのは、がんにより低下した抗原提示機構を回復増強する、低下・減少した免疫担当細胞やサイトカインを増加・増強する、転移促進因子の増加も抑制される、などの要因による。がんが免疫から逃れて成長するためのシステムを、温熱療法が正常に戻すことにより、本来の免疫機能を取り戻してがんを排除すると考えられる。

当センターでは、免疫療法と温熱療法の症例が803例あるが、そのほとんどが再発して治療が困難な患者さんだ。そのうち、完治症例が19例。それも含めた有効症例は121例である。完治症例には、難治性の膵がんも2例含まれている。免疫療法に温熱療法を併用することにより、有効率が倍増し、完治症例が多数得られるようになった。しかも樹状細胞療法を施行した部位だけでなく、腹腔内など遠隔臓器への多発再発もすべて完治となる症例が複数得えられた。大学病院などでは、免疫療法は治療範囲に含まれていない場合があり、免疫療法を知らない医師も多い。一方、民間施設で「手術なんかしなくても当院の治療をすれば治る」と言いながら、免疫とは名ばかりで、実は標準治療を知らない医師もいる。標準治療を熟知した上で、免疫・温熱療法も専門家として経験を積んでいる医師であるかどうかに注意して受診してください。

   

前のページ
II部 免疫細胞療法とハイパーサーミア 「癌治療にとって免疫を上げることの意味と対策」
コンテンツのトップ 次のページ
パネルディスカッション・質疑応答
メニュー