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特別講演 「ハイパーサーミア治療とは」 医療法人康仁会西の京病院院長 | |||
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熱に対する組織の反応をみると、正常な組織では血管がよく拡張し、血流が増えて放熱される。逆に、がん細胞は熱に弱いうえ、がん組織内の血管はあまり拡張しないため血流が悪く、熱がたまりやすい。ハイパーサーミアは、この特性を利用している。 生体組織は約70%が水分子でできていて、それに所定出力の高周波を加えると、振動運動・摩擦運動が顕著に起こり、熱が発生(自己発熱)する。水分子同士が「押しくらまんじゅう」のように押し合いをすることによって熱が出るという原理だ。ハイパーサーミアに用いるサーモトロン-RF8は、がん組織を中心に体表から電極で挟んでコンデンサーを形成することで、表在性がんから深在性がんまで非侵襲的に治療できる。 がん組織を42℃以上、また周辺正常組織を40℃〜41℃に発熱させることにより、前者を致死、後者を機能活性化させる複合的ながん治療を求める技術だ。すなわち、42℃以上の発熱でがん組織を直接的壊死効果に導くとともに、周辺の組織はそんなに温度が上がらなくても、正常細胞活性化、宿主免疫(樹状細胞、NK細胞など)の活性化、併用する抗がん剤の取り込み量の増大、QOLの向上などの効果が期待できる。 有害事象はほとんどないが、体表の凹凸で電極が均等に当たらないために皮膚の熱感・痛みが生じることがある。また脂肪組織の厚い人に、脂肪硬結(2〜3日後に出現し1〜2週後に消失)が起きることもある。大量に汗をかくので脱水に注意し、水分補給を心がける必要がある。 2009年10月から開始した当院の症例は150例ほどあり、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなどが多い。転移したがんの場合は主に転移の部位を中心に、全身の骨転移の場合は特に痛むところを選んでハイパーサーミア治療を行っている。 この治療法の特徴として、副作用がほとんどないこと、併用治療の相乗効果、化学療法の副作用軽減、免疫活性化、エンドルフィン(脳内麻薬と呼ばれる神経伝達物質)活性、QOL向上などが挙げられる。 | ||||